その後

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何列にも並ぶ艶のある木製の会衆席。向かって右側には彼の親族の皆さん。揃いも揃って黒色のスーツをビシッと着用して怖さと存在感半端ない。なるべく他の参列者の皆さんに威圧感を与えないようにするにはどうしたらいいか、中澤さんが、前日まで彼のお父さんと打合せしていたみたいだけど。 左側の最前列には遥香を抱っこした橘さんや、那奈姉さん。あと、お母さん。一太は二人の間にいるみたいだった。頭のてっぺんだけだけちょこっと見え隠れしていた。 パチパチと温かな拍手に出迎えられて。バージンロードを一歩ずつ幸せを噛み締めるように、お父さんと一緒にゆっくり進んだ。 「泣きすぎだ」って彼。笑っていた。だって両親が来るなんて一言も聞いていなかったもの。遥琉さんの意地悪。頬っぺたをこれでもかと膨らませた。 「卯月さん、不束者の息子ですがどうか宜しくお願いします」 お父さんが深々と頭を下げて彼に引き渡した。 「未知は私にとって最高の妻です。子供たちにとっても最高の母親です」 恥ずかしくなるような言葉をさらっと口にする彼。熱っぽい眼差しで見詰められて。心拍数が一気に上昇した。 「いこうか」彼にリードしてもらい壇上へ。 まま‼一太の声に思わず振り返った。 【嘘・・・】 視線の先の光景にはらはらと涙が静かに頬を伝った。 一太が笑顔で二人の手をそれぞれしっかりと握り締めてぶんぶんと大きく振っていたのだ。今日生まれて初めてお母さんと会ったはずなのに。 ゛ままみて、いちたのばあばだよ゛ 一太の顔が自慢げにそう言ってるようだった。 「一太の笑顔はみんなを幸せにするから不思議だ。一太がな、みんななかよくしないとだめって、そんなことを言っててさ。だから、どうしても未知に両親に会って貰いたかったんだ。ごめんな、黙ってて」 彼の指が目蓋の縁をそっと撫でてくれて、涙を掬い上げてくれた。
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