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式は厳かな雰囲気に包まれ、粛々と式次第に基づき進んでいった。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
牧師さんの声が高らかに響き渡る。
「私はあなたの夫となる為にあなたに自分を捧げます。そして私は今後、あなたが病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びにあっても、悲しみにあっても、命のある限りあなたを愛し、この誓いの言葉を守って、あなたとともにあること誓います」
彼がしきりにに乗っ取って言葉を述べていると一太が乱入してきて、僕の代わりに「ちかいまちゅ」と大きい声で答えて参列者の皆さんから拍手喝采を受けていた。
キスは人前では絶対しない‼って彼。みんな未知を好きになったらどうするんだって真顔で言ってて橘さんに怒られていたっけ。最後の最後まで嫌々を繰り返していた彼。
本番では渋々ながらも、頬っぺたに軽くキスをしてくれた。
式が無事終わり、教会に隣接するレストランでゲストの皆さんを招待して食事会を開いた。
遥香はぐずって泣いてばかり。オムツを交換しても、おっぱいをあげてもわんわん泣き通しで。仕方ないから一太を彼と橘さんに頼んで散歩に連れ出した。
「未知、大丈夫?」
お母さんがすぐに追い掛けてきてくれて。那奈姉さんまで来てくれた。
「親子で散歩するって、はじめてじゃない?」
お母さんが半歩先を歩いて。
那奈姉さんと並んでそのあとを付いていった。色とりどりの花が咲き乱れる庭園を見て歩き、木立の下にあったベンチに三人で腰を下ろした。
雲ひとつない青空。心地よい風が吹いていた。
会話を交わさなくてもお互いの気持ちが分かるから不思議。遥香もぴたっと泣き止み笑顔を見せてくれた。
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