その後

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そんな遥香を目を細めて眺めていたお母さんがくすっと自嘲した。 「一太や遥香のお陰ね。私達親子がこうして再会出来たのも。未知、ごめんね。母さん、一太を殺そうとした。ほんとうにごめんね。那奈もごめんね。母さん知ってて見てみぬ振りしていた。二人には正直に言うわね。母さん、昔のトラウマでセックス依存症になってしまったの。お父さんと付き合いながら、色んな男性を家に連れ込んで行きずりを関係を続けていた。中には那奈が目的の男性もいた。目の前で性的な悪戯をされ、泣きながら助けを求めるあなたの声に、母さん耳に蓋をして見知らぬ若い男との行為に溺れた。寸での所で茨木さんに助けられて、そのまま兄の許に引き取られたあなたを迎えに行かず、結婚しようと言ってくれたお父さんを選んだの。こんな最低な母親、一生許さないでしょうね」 お母さんのちいさな肩がわなわなと震えていた。一筋の涙が頬を伝い、手の甲へと落ちていく。 「一つ、他人を妬まず、二つ、母親を憎まず、三つ、養父母に感謝する心を常に持ち、四つ、己の境遇に悲観せず、五つ、いつか母親や弟と再会したときは分かり合う優しさと、赦す気持ちを持つーー茨木さんが、いつも私に言っていた言葉よ。だから、私は夫を・・・遥琉を取られても未知を許したの。あの日以来、男性が怖くて、受け入れられないトラウマをずっと抱えていた。だから彼との夫婦生活は殆どなかった。彼が無類の子供好きなのを知ってるからこそ辛かった。彼の愛人に子供が産まれれば、私と彼の子供として育てればいい。だから、愛人と付き合うのを黙認した。でも未知以外、誰一人彼の子供を妊娠しなかった。柚奈、さん・・・」 とげのある声で母さんじゃなく、名前で呼んで、きっと睨み付けた。 「申し訳ないという気持ちに嘘偽りがないなら、尊さんとちゃんと向き合う覚悟、あなたにはありますか?」 「那奈・・・」 ハッとし、息をのむお母さん。
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