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守り守られて生きていく
翌日ーー
「じいじ‼」
「じいたん」
「おう、来たか」
黒塗りの門の前で着流しに身を包んだお義父さんが笑顔で僕たちを出迎えてくれた。
『お前のことなんてこれっぽっちも心配していない。ワシが心配なのは嫁と孫だ』
一時間前に携帯にお義父さんから電話があって。恐らく警護の件だろう、そう言って彼が代わりに出てくれた。
『襲名式が終わるまで、ウチで三人を匿う。茨木にも、心にも話しは付けてある。一太の幼稚園の送迎もウチでするからすぐに連れてこい』
「すぐって、親父」
『何かあってからでは遅いだろ』
お義父さんの苛立った声が携帯から漏れ聞こえてきた。
「分かった、急いで用意する」
切羽詰まった状況であることは彼が一番分かっていること。電話を切るなり、リビングで仲良く子供番組を見ている二人のもとに向かった。
一太に、しばらくの間、パパのじいじのところに泊まることになった。ママと遥香をちゃんと守るんだぞ。そう言い聞かせた。
二人ともお義父さんが大好きだから、飛び上がって大喜びしていた。
龍一家の組長として、凄みをきかせた強面の顔だちで、じろりと相手を睨み付け、幹部でさえも近寄るのを躊躇う存在であるお義父さん。でもどういう訳か孫の前では、目尻は下がりっぱなしになり、でれでれになってしまう。
きっと分け隔てなく可愛がってくれるから、平等に接してくれるから、二人ともお義父さんが大好きなのかも知れない。
「未知さんや、血の繋がりなんてそんなの関係ねぇよ。一太も、遥香もワシの孫だ」
以前お義父さんにそう言われた。後妻の連れ子でも、そんなのは関係ない。遥琉の長男として、卯月家の孫として堂々とみなに紹介すればいいんだって。
「ほら、二人とも」
一太も遥香もお義父さんに抱っこして貰いたくて、我先に小さい腕を懸命に伸ばしていた。パパの声なんか聞こえていない。
「しゃあないな」
嬉しさのあまり顔が緩みっぱなしになるお義父さん。彼がもう年なんだからと止めるのも聞かず、右腕で一太を、左腕で遥香を抱き上げた。二人ともじいじすごいと黄色い歓声を上げておおはしゃぎ。
「若い者には負けん」
ってお義父さん。意外と負けず嫌いなのかも。上機嫌で、意気揚々と母屋に向かった。
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