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取り敢えずご飯食べてくださいと言われたけど食欲があまり沸かなくて。ズキズキと痛む腰を擦りながら、怠い体を引き摺りながらカフェに向かった。
「じゃあ、私はここで」
何時ものように店の前に車を停車させる橘さん。でも今日は、エンジンを切らず、ハンドルも握り締めたままだった。
「警護はもう必要ありません。意外と狭いんですよこの業界は。ですから貴方が卯月の妻になることは縣一家や手嶌組にすでに知れ渡っています。誰も好き好んで喧嘩を売ったりしないでしょう?しかも相手は卯月ですし」
橘さんに行ってらっしゃいと笑顔で手を振られ車から降りた。
潮騒の音を聞きながら彼を見送り、辺りをキョロキョロと見渡した。
昨日まで道路の反対側に黒塗りのゼダンが路駐していて、行動を逐一監視されていた。
でも、今日は停まっていない。
「未知、どうした?」
カランカランとドアが開いて、茨木さんが心配そうな表情を浮かべ顔を出してきた。
ちゃんと言わないと。
卯月さんと一緒になるって。
一つ深呼吸し、店の中に入った。
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