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「起きたか?」
がしゃがしゃと鍵を開ける音がして、レジ袋をぶら下げたお兄ちゃんが入ってきた。
「お腹すいただろう」
「未知が好きな甘いものも買ってきた」
ドサッとラグマットの上にレジ袋を置くと、お兄ちゃんも腰を下ろした。
【手錠を外して‼】
両手を高く掲げて必死に訴えた。
「どうせまたパパから逃げて、あの男のところに行くんだろ?そんなの2度と許さない。未知はここでパパと一緒に暮らすんだ。何、心配ない。死ぬまでパパが未知の面倒をみてあげるから」
くくくと冷笑するお兄ちゃん。
体を起こして貰ったけれど、脅すようにわざとゆっくり話し掛けられ、鋭い眼光で睨み付けられた。
「喋れなかったんだな、そういえば。まぁ、大声を出したところで誰も助けに来やしないがな」
一人言をぶつぶつ言いながら、レジ袋からお弁当を取り出した。
「悪いが二、三日はコンビ二の弁当で我慢してくれ」
カシャカシャと透明の蓋を外し、割り箸を二つに割った。唐揚げの香ばしい匂いの先に一太の顔が浮かんできた。
唐揚げ大好きだもんね。
ちゃんとご飯食べたかな?
パパの言うことを聞いて、お利口さんしてるかな?
切羽詰まった状況にも関わらず、自分のことより一太のことばかり考えていた。だから、冷静でいられたんだと思う。
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