かけがえのない宝物

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「そろそろ三人目が出来たんじゃないか?男子が二人いれば龍一家も、卯月家も安泰だ」 「それが、自分が苦労したから、絶対に家業は継がせないと。同じ思いはさせたくないらしい」 「そんな勿体ない」 秦さんガッカリしていた。 「仕方ないだろ?キッパリ龍一家とは縁を切ったんだ。今はカタギだ」 「まぁ、今のご時世、ヤクザは流行らないからな」 秦さんが胸の内ポケットから白い封筒を取り出し、僕の前に差し出した。 「組長襲名式の招待状だ。遥琉に立会人を頼みたいと思ってな。縣さんとこも参列してくれる」 数日前。 那奈姉さんから再婚することになったの、そう連絡がきた。 相手は秦さんの腹心の福井さん。 彼曰く、過去に二度跡目相続で、組が真っ二つに別れ抗争に発展した経験から、秦さんが一番信頼を寄せる福井さんが婿養子に入り跡目を継ぐのが一番波風が立たないみたい。 那奈姉さん好きでもない人となんでまた結婚しなきゃいけないの? 組を守るためとはいえ、ほんとにそれでいいの? 有紗ちゃんは? 茂原さんは? メールで質問攻めにしてしまったけれど何一つ答えてはくれなかった。 ゛ごめんね゛翌日、それだけ返信が送られてきた。 有紗ちゃんは那奈姉さんの一人娘。遥香が産まれた年の12月に誕生し、一歳半を迎えたばかり。 茂原さんは有紗ちゃんの実のパパさん。組の幹部で秦さんの補佐をつとめている。 てっきり茂原さんと一緒になるものかと思っていたから、驚きの方が大きかった。
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