逆恨み

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昇龍会の組長襲名式を明日に控え、お義父さんに呼び出された。 「福井の腹心が急用でこれから来る。その前に未知さんに渡したいものがあってな」 そう言われて黒い着物を渡された。 背中に卯月家の家紋である亀甲に花角を刺した黒羽二重の着物に仙台平の袴。和装に疎い僕にでも分かるようにと、心さんまで呼び出して、着付けの仕方を一から丁寧に教えてくれた。 「ワシの代理で行くからには、和の正装で参加せい。何度も遥琉に言ってるんだが、耳を貸してくれなくて困っていたんだ。悪いが未知さんの方から頼んでくれないか?」 お義父さんの頼みを断るなんて、そんな失礼なこと出来ないもの。はい、大きく頷いた。 「カシラ、お客さんが見えられました」 根岸さんが顔を出した。 「通せ」 お義父さんに軽く会釈して、着物を両腕でそっと抱き締め、心さんと一緒に客間を出た。 廊下で福井さんの腹心の方と擦れ違った。確か笹原さんっていう名前だったような。 擦れ違い様、突き刺さるような冷たい視線を感じて顔を上げると目が合った。
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