彼が、好き

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ピピピィ枕元の目覚まし時計が鳴り出し、二人を起こさないようにすぐ止めた。 あのあと、卯月さんの機嫌が悪くなって。仏頂面したまま、目も合わせてくれず。気まずいまま就寝した。 一太を腕枕し胸元に抱き寄せて横臥している彼。二人ともすやすやと穏やかな寝音を立てて熟睡していた。 同じ空間に一緒にいるだけで、不思議と安心する。満たされる。 起こさないようにそっと、彼の顔を覗き込んだ。 すっと通った鼻筋、男らしいきりっとした眉。瞼を閉じてても二重の線がハッキリしてて。でも開いている時の方が断然格好いい。久し振りに見る彼の寝顔に、整った顔の造りに見入ってしまった。 「うっ、う・・・ん・・・」 ピクピクと彼の瞼が微かに動いて、慌てて顔を逸らしベットから飛び起きた。 「・・・な、な・・・」 眠気眼を擦りながら、彼の口から零れ落ちたのは知らない女の人の名前・・・恐らく奥さんの名前だろう。 心の奥に芽生えたのは、彼に愛される奥さんに対する嫉妬心。 引っくり返すことの出来ない紛れもない現実に、胸が締め付けられ、苦しくなった。 彼が好き。 この瞬間、僕は、彼へ対する想いをハッキリと自覚した。
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