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問えば、正吾はプルプルと首を振った。
「昨日のお酒、すごく美味しかった。また、良い気分になりたいな」
「正吾さんがいいなら、何度でもして良いですよ」
驚いて顔を上げた正吾に、連は顔を寄せて唇を吸った。
「……えっ? あむっ」
唇を重ねたまま抱き寄せると、早鐘を打つ心臓の音が聞こえてくる。
このまま、奥の奥まで貪りたい。伝ってくる唾液すら甘く感じるのだから、もう、どうしようもない。
トイレに連れ込んで、このまま欲望を吐きだしてしまいたいが、さすがに連も見境のない獣にはなりたくなかった。理性をどうにか保ちつつ、それでも、正吾の感触が名残惜しくて、連は舌を吸いながら唇を離した。
「大丈夫ですか、正吾さん。帰ります?」
余韻なのか驚いて固まっているのか、正吾は連にしがみついたまま、正吾はぜえぜえと肩で荒い息をしていた。
「だい、じょうぶ」
正吾は首を振って、もう一度「大丈夫だよ」と連のシャツをぎゅっと握りしめた。
濡れて光る目が、色っぽくて目眩がしそうだった。
「じゃ、行きましょう。嫌いな食べ物とかあるなら、遠慮しないで早めに言ってくださいね」
「うん」
頭上のスピーカーから案内の放送が入る。
程なくして、乗り入れてくる電車。
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