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 故郷も違えば、貧乏人と金持ちと生活環境も天と地ほどのさがあるが、颯太は快活な性格で、誰に対しても分け隔てなく接する、模範的なまでのいい人だった。  頭も良くて、運動もできる。取り巻きは家柄の良い連中ばかり。  そんな颯太が、どうして連を友人枠に入れた理由はわからない。見目が良いだけが取り柄だったので、単に顔が好みだったのかもしれないが。  遠い田舎から、カツカツになりながらも東京に出てきた連にとって、嫌な顔をせずに受け入れてくれた颯太は頼もしく、あこがれの存在だった。  ふたたび閑散とした道を歩きながら、連は重い溜息をついた。 「冗談だからって、なんだよ。こっちは、本気だったんだぞ」  視界にかかる黒髪を書き上げ、唇を噛む。  思い出せば思い出すほど、忘れようと努めるほどに、胸が締めつけられる。  連は、颯太に恋をしていた。  連の恋愛対象は、女性ではなく男性にあった。  周囲とどこか違うと感じ始めたのは、中学生の頃。以来、連はどうしようもない孤独と折り合いをつけながらどうにか生きてきたのだが、神様は悪戯が好きなようだ。 「なにが、罰ゲームだよ。ふざけやがって」  先月、サークルの飲み会の席で密かに行われた悪事。  風邪で欠席した連に、颯太が嘘の告白をする。悪ふざけも大概にして貰いたかった。     
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