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 すぐ隣を過ぎ去る自転車に飛び出したくなる衝動を抑え、連は家路を急いだ。今日も大学で授業があるが、さすがに出る気分ではない。 『ごめんな、連。以前と同じように友達でいてくれよ』  悪ノリが洒落では済まない内容だったのに気がついた颯太は、ひたすら謝った後にそう締めくくった。  たぶん、颯太ができる精一杯の誠意だ。  わかってはいるが、気持ちをもてあそばれた連からすれば、ただの定型文のようにしか受け取れなかった。  以前と同じような、友達。  そんな、都合の良い関係は男女間であってもなり立たないだろう。  だんだんと腹立たしくなってきて、連は側にあった電柱に思いっきり蹴りを入れた。痛いのはもちろん自分のほうだが、なにかに八つ当たりしなければ、正気を保てそうになかった。 「馬鹿だよな、俺。こんなに、颯太のことを引きずるなんて思ってもみなかった」  思いが通じたと舞い上がった分だけ、墜落した衝撃はすさまじいのかもしれない。  ついこの間まで、殺風景な家路はバラ色に輝いていた。  颯太を抱く妄想に耽り、盛りのついた高校生のように自分を慰めていた。  なんて、滑稽なんだろう。連は拳を握りしめた。  恋なんてしない。  ずっと、一人で生きてゆく覚悟を決めていたはずなのに、あっさりと揺らぐ弱さに震えが走る。     
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