第三章 王都奪還

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第三章 王都奪還

 倭国の夏は、一面の輝く緑から始まる。  豫国よりも遙かに広く多くの平野のある筑紫島では、夏には一面の緑が季節の訪れを告げるものになっていた。空には十をゆうに超える種の鳥が飛び交い、地には猪、狐、狸、鼬といった何十種もの獣が走っている。    この緑には実に様々な生命の蠢きが宿っており、鬱蒼と生い茂る木々や草花には、花や実だけではなく溢れんばかりの神秘の霊威が宿っている。まるで崇めるように寄ってくる虫や獣たちにとっては、まさに神のような存在となっていた。  青く澄み渡った天空を見れば、日を覆い隠すほど大きな鳥が何羽も舞っており、まるで何かを祝福しているようであった。    阿蘇の山から下りてくる風は大らかで、この土地の風土のなんたるかを一瞬のうちに知らしめさせる。    それは旧王都(オロチ)から南下して築かれた臨時王都も同様だった。東に阿蘇の山が聳える地である臨時の王都は、今まさに輝く神秘の季節を謳歌していた。  その季節の中で、倭国の人々の表情は誰もが穏やかになりつつある。すでに王都の基盤は揺るぎないほどに完成し、開田された土地はゆうに百を超え、昨年の秋にとれた米の量はかつての王都の周辺でとれた量とほぼ同じになっている。収穫される米の量に比例するように、倭国の兵の数も実力も着実に増えていっており、じき行われる王都奪還の戦を前に万全の体制を整えつつあった。
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