消えゆく中で

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私はもう長くない。 脳の機能が日に日に低下している。 そうだ…。 今の私の役目は、彼の罪悪感、未練を消すこと。 消えゆく中で、消えそうになりながら、消そうと必死になって、書いた手紙。 ツテがあって良かった。 最近関わらなくなった、彼の彼女さんを、呼んだ。 あぁ。 私の人生は楽しかった? 最高の車に出会えて… でもその車で結局死ぬんだもんな… あっけねぇ。 もう終わりか。 今思うことは一つ。 彼女さんを、幸せにするんだよ。 私は彼女さんに、イノチを渡した。 あぁ。 ずっとナビシートに座っていれば。 車を降りて、助手席専門になれば、こうはならなかったのかな。 でも彼と会えたキッカケなんだよ。 そんな簡単に降りれないよ…。 君は、どうしようか。 スクラップ?それも辛い。 だけど、誰だか知らない人が乗るのも嫌だ。 君は、あの人に任せるしかないかな。 それじゃあ、元気でやるんだよ。 全て託した手紙を渡し、少し気が楽になったのか、呼吸が出来た。 それでも、余命宣告からうんと生きたんだな。 楽しかった。 あなたのナビシートだけじゃなかったから、そう思えるかもしれない。 あなたの隣に、座っていなくても、私が自分であなたを追うのも、楽しかった。 だから、いいんだ。 楽しめたんだから、それが幸せってやつだろう。 それに… これからはずっと、あなたのとなりに入れるんだから。 後悔なんてしてないよ。
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