壱 -1-

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 地球上全ての人類が核武装を解除し、それぞれ鎖国を始めたのは大戦終了直後のこと。物資の調達以外では、一切合切、文明を共有し合わないという条約が可決。世界の人々にとって、自分を含めたすべての概念を覆すほどの戦争だった。そうした中、核や武器など恐ろしいものがなくなった代わりに、日本に定着したもの。それが、先祖返りという突拍子もないものだった。  焼け野原になってしまった日本列島。日本アルプスは核衝突の影響を受け一部変形し、西にあった巨大な湖も半分足らずに土砂に埋められてしまった。人々は今までコンピューターに囲まれていた自由な暮しを全て失い、首都機能のみならず、これまで日本を動かしていた政治家までをも取り払ってしまった。  人々は落胆し、生気を失い、生き残った僅かな人々はその日食べるものを探すことで一日を使うという有様。何もかもが破壊され、誰からの救助も得られず、積み重なった瓦礫を取り除いてくれる救世主もいない。やがて人々は徒党と組んで略奪行為を行うようになり、残っている樹木を切り倒しては街を形成するようになった。弱者は死に、無作為に殺され、強者は更に強くなる。  日本は核戦争により、たった数年でいまだかつての平穏安否な暮しを全て放棄し、再生することなく家畜よりもひどい生物に成り下がってしまった。     
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