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そういえば……隆二さんに夢中になって忘れてたけど…
『"老婆心さん"に連絡してないっ!!』
「あぁ、俺がしておいた」
聞けば、羽田の到着ロビーを駆け抜けながら"俺が行く"って連絡したとか。
ご丁寧に"茉莉花には黙っておけ"と付け加えて。
てっきり空港に老婆心さんを呼びつけたのだとばかり思っていたけど、隆二さんは私の所までタクシーで来たって。
『……どうして?』
「…………」
『……耳、赤いよ』
「……うるせー」
いつも冷静で頭がキレるのに、きっと慌ててたんだよね?気持ちが焦ってた?
うつ伏せから横向きに体勢を変え、隆二さんを見つめながら赤くなった耳たぶに手を伸ばす。
『帰ってくるなら連絡くれれば良かったのに…』
そしたら私は仕事をズル休みして空港に行ったかもしれない。
実際はそんなことないけど、それをしてしまいそうになるくらい隆二さんを欲してた。
「……お前電話出ないだろ……シカトすんとかマジでいい度胸してる」
ワントーン下がった声。
や、やっぱり怒ってる…
…私だって怒ってたもん!連絡しないで一時帰国してるとか。
でも、惚れた弱み?心配になって思わず聞いてしまう。
『……怒ってる?』
「……お前は何に怒ってんの?」
え、、私が怒ってる事分かってるの?それがただのワガママな内容だって事にも気づいてる?
隆二さんの耳たぶの赤味が引くのと反比例するように私の頬は熱を持つ。
彼の耳から手を戻し、今度は自分の口元を覆って照れを隠した。
「……なぁ、何?」
悪戯に笑いながら聞いてくる彼は確信犯だ。
『もう、、やだっ』
たまらず身体を翻して背を向けると、耳に感じる唇の感触。
「……ほんと、苛めがいのある奴」
奥まで響いてくる彼の甘い声。
肩に手が触れ、そのまま回転させられ見上げた先には私を艶っぽく見下ろす隆二さんの顔。
「……心配すんな」
ゆっくりと重なった唇はすぐに熱を持ち、私をまた官能の世界へと誘う。
隆二さんはもう一度、確かめるように私の身体に自分自身を刻み込んだ。
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