甘やかす男たち

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『久砂さん』 そう、私の待ち人久砂さん。 今回のイベントは分からないとこだらけで隆二さんに相談したら「どうにかなる」の一点張りだし、宗正くんは「俺もよく分からない」って言うし、やっぱりここは久砂さんだと。 本当は隆二さんにって思うけど、最近彼はちょこちょこ朝帰り。 それは別にいいんだけど、だからゆっくり相談もできてない。 「なに、どした?」 『パーティーどうしようと思って。クルージングなんてしたことないし、ましてや豪華客船…全く想像できないんです』 「あぁ、なんだそんなこと」 サングラスを外しながら私の横に座り、当たり前のように肩に腕を回してくる。 『久砂さん、ちょっと人の目が…』 「いや、いないじゃん」 …普通にカフェだし 「……隙あり」 他の席を気にして視線を遠くへやった私の顔を無理やり自分の方へ向け、久砂さんはいきなり唇を塞いできた。 いつもなら挨拶程度に触れるだけなのに、今日は違う。 "逃さない"とでも言いたげな強引なキス。 なのに、最後は唇を挟んで優しく離れる。 『ちょっと、挨拶が行き過ぎですよっ?!』 「は?!それマジで言ってんの?」 『マジです。大マジ』 唇を隠したまま目を細めて抗議すると、隣からは盛大なため息。 「挨拶でんなキスしねぇわ」 『じゃあ何ですか。もぉ~…お客様に見られたら大変。で、パーティーのことですけど』 無理に変えた話題。 このままだと私の意図しない方へ話が進みそうだったから。 久砂さんの態度は宗正くんとも違くて、どちらかと言うと隆二さんに似ている。 だから戸惑う。 最近は特にそれが顕著で。でも、一歩引いてる。そんな立ち位置の久砂さん。 「…まったく」 小さなため息の後には、造ったように綺麗な笑顔が向けられた。 「イベントはさ、まぁ適当に。俺たちは慣れてるし、どうにでも出来るから心配すんな」 『え~…それじゃ私の仕事が…』 「茉莉花はいればいいんだよ」 ……………。 『またそうやって甘やかそうとする』 今度は私が短いため息をつく。 久砂さんは笑ってたけど、次の瞬間、冷たい顔……ううん、切なそうな顔をした。 「隆二にもそうやっていつも甘やかされてんの?」
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