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目の前に来たその男は驚きを隠すように目を細め、私を見下ろした。
視線が絡んだ瞬間、手を伸ばして私の口からチュッパチャプスを抜き取った。
呆然とする私を見つめ妖艶に微笑んだと思ったら、いきなりしゃがみこんで視線の高さを合わせてきた。
瞬きもせず、近距離でまじまじと顔を見られる。
納得したのか、リュウジという男は目の前で舌を出し、今まで私の口の中にあったチュッパチャプスをひと舐めした。そして、そのまま自らの口に放り込んで立ち上がり、もう一度私に微笑みかけてから、何事もなかったように階段を上っていった。
その微笑みが、”帝王”じゃなくて”魔王"に見えた。
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