甘やかす男たち

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"営業真っ最中" その言葉の意味することなんて分かってる。 ただ、認めたくないだけ。 "待ってろ" 用事があるけどそんなに遅くならないから一緒に帰ろう、そう言われて待ってた。 空いた時間に仕事を進めてしまおうと久砂さんに来てもらったりして。 それなのに、 《わりぃ、遅くなりそうだから先帰って。迎え行かせる》 だって。 はぁぁぁぁぁぁぁぁ……… 隣を歩く久砂さんに気付かれないように盛大なため息を心の中でつく。 "営業中"だから遅くなるの? 最近の朝帰りは"営業"帰り? 街を颯爽と歩く久砂さんは、サングラスをしててもイイオトコのオーラを隠しきれない。それを中和するように、私の心はダークだ。 横を向けばショーウィンドウに映る冴えない顔した自分と目が合う。 こんなんじゃダメ。 夜の世界で限りなく頂点に近いところにいる彼に惚れたのは、紛れもなく自分なのだから。 誰に強要されたわけでもない。 ただ、割り切るのはなかなか大変。 私には、割り切れるだけの力量がないかもしれない。最近そんな風に思ったりもする。 夜の世界には染まりきれない。 隆二さんの今夜の予定が仕事なのか仕事じゃないのか分からないけど、"私より優先"って事実だけで十分。 そんな事思っちゃう自分も嫌で、なんともいえない気持ちが膜をはる。 まだ見ぬ相手に対抗心を燃やしたり。 可愛げなく 《分かりました。これから私も出掛けるので迎えはいりません》 なんて返信したりして。 久砂さんの名前を出さなかったのはせめてもの抵抗。 『何食べるんですか?』 「肉。いいとこあんだよ」 連れてこられたのは、希少部位ばかりを扱う会員制の焼肉店。 ビルの側面についた映画のワンシーンに出てきそうな螺旋階段を登った先にあるシンプルなドアを開けると、赤と黒で造られた"いかにもお忍び"的な店内が現れる。 「俺ら結構この店使うんだよ。見られるとやばい時とかキメたい時にさ。あ、隆二と来たことある?あいつも結構使うからなぁ、この店」 ……連れてきてもらったことなんて無いし、この店自体知らされてない。
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