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お客様が途切れた頃合いを見計らい、ショップに遊びにきていた親友のサナに小声で話しかけた。
『ちょっと聞いて。昨日ね、すっごいイケメンがきたの。もうイケメンって言葉だと失礼なんじゃないかってくらい、綺麗な男の人』
「え~…本当にイケメン?茉莉花の基準て低いからなぁ」
アッシュベージュのミディアムヘアをゆるくまとめてこなれた感じのサナは、見た目が派手だけど、実はガラス細工職人っていう異色の経歴を持っていて、そのギャップがウケてちょっとした売れっ子だったりする。
『たぶんだけど……ホストかなって。うちの顧客様が連れてきたんだけど、1000万円近い時計プレゼントしてたし。その人ももらい慣れてる感じだったの』
「ふぅ~ん、ホストねぇ…。でもさ、その高級時計を買わせたのは茉莉花でしょ?相変わらずマダムたちの心を掴むのが上手いんだから。この商売上手!」
『あはは。でも似合うものしか勧めないもの。あ~…似合ってたなぁ~…時計。きっとあの時計もあの人につけてもらって嬉しいはずだよ』
「ホストっていえば、どこかの路地裏にあるって噂の一軒家の超高級ホストクラブ知ってる?」
『知らないよ、ホストクラブなんて行ったことないもん。お金取られそうだし、騙されそうだし、楽しいの?』
ーーーーあぁ、それなら"THE CLUB"のことですね
私とサナの会話を遮るように突然入ってきた声。
ハッと視線を移すと、人懐っこい笑顔でこちらを見つめる一人の男性がいた。
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