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本音と建前
逢えないほど想いが募る、とはよく言ったもので、今まさに私はその状態。
……三日前から隆二さんがいません。
たかが三日、されど三日。
遠距離恋愛なんて私には絶対できないと思い知った三日間。ほぼ毎日どちらかのベッドで一緒に寝てたし、顔を合わせない日なんて無かったのに。
『…電話ぐらい掛けてこい、ばーか…』
小声で悪態ついてみたり。
「はいはいはいはい。で、その愛しの隆二さんはどこ行っちゃってるの?」
『マカオ』
「海外行っちゃってんの?しかもマカオ?!うわっ、似合う~!隆二さんとマカオ」
そうなんです。隆二さんはレイカさんと一緒に三日前からマカオ。
レイカさんのフィアンセがカジノに招待してくれたんだけど、なぜか隆二さんも呼ばれたらしくて。
「いや~ん、美女はべらせて今頃豪遊かしら?」
『もぉ!サナやめてよー!シャレになってない』
「金と女と、酒と……う~ん、クスリ?」
『やってないから!!……たぶん』
うん。いけない粉には手を出してないと思う。そのへん隆二さんはクリーンな気がするのよね。
サナと恒例の仕事帰りの一杯。
飲むと余計に逢いたくなっちゃうし、淋しいよ。
淋しいからお酒も進む、進む…。
『ばかやろ~!!電話ぐらいしてこ~い!浮気してやる~!!』
「おっ!ええの撮れたな」
…………っ?!
スマホをこちらに向けながら近づいてくる一人の男性。
「よっ!おはようさんっ」
満面の笑みで夜の挨拶をしてくるのは、ケイさん。
『……ケリィさん』
「あらやだ、待った?お髭隠すのに時間かかっちゃってぇ。ってちゃうわ!今日はケイやっ」
「こんばんは~。え~宗正のお迎えじゃないんですか~?」
「おぅサナさん。うちの茉莉花さんがいつもえらいお世話になりまして…」
「「あっははははは~、いぇ~い!」」
サナも今ではすっかり店のホストたちと仲良し。
「ほら、帰るで?さっさと支度しいな」
「『は~い』」
隆二さんが帰国するまであと10日。隆二さんがしてくれていた分の迎えをケイさんがしてくれている。
久砂さん曰く、「安全だから」なのだと。
部屋に戻り、バッグを床に投げ出してソファに身を投げる。バッグからこぼれ落ちたスマホに目をやると、待ちわびた番号が表示され着信を知らせた。
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