魅惑の船旅 DAY-2

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魅惑の船旅 DAY-2

隆二さんは眠っている時、絶対にいつも私の方を向いている。 朝目覚めるといつも首の下には二の腕があって、私がどこを向いていてもそれは変わらない。 男の人にしては細くて長い綺麗な指。私を抱くとき以外はほとんど外さないTHE CLUBのリングの跡が白く残っていて、そこに自分の指を絡ませてみたり。 私の薬指で光る三本のリングを眺めてみたり。 ……返さないといけないよね。 久砂さんと宗正くんに。 いい気はしないはずだもの、他の男からの贈り物なんて。 …でもこれ、可愛いいの。物に罪はないよね、なんて事言ったら怒られそうだけど。 一瞬意識が遠のき、次に気が付いた時には、つい今しがたまで隆二さんがいた事を物語る温もりを残したシーツが目の前に広がる。 シーツを身体に巻きつけ、ベッドからゆっくりと脚を下ろし室内を見渡す。 ………いた。 風に揺れるカーテンの隙間から覗く、少し憂いを帯びた横顔。 水平線より少し高いところに昇った朝陽に照らされて物思いにふける彼の背中に頬を寄せた。 『隆二さん、おはよ』 ぐるりと腰に腕を回して逃げないように抱きしめる。私の腕に手を添え、彼は振り返る。 「……おはよ」 ………。 隆二さんのまとう雰囲気というか、特別な朝なんだと実感できる優しい声。 彼に"好き" と伝え、隆二さんの気持ちも聞いて、満たされているはずなのに胸が苦しくなる。 腕に力を込めれば、たしなめるように手を撫でられ、あっという間に私は隆二さんとバルコニーの手すりの間に追いやられた。 爽やかな風が洋上をかすめ、私の髪の毛を乱していく。整えるように彼の手のひらが私の髪の毛を絡め取り、そのまま後頭部に回って。 唇がくっついて。 憂いを帯びた顔は、穏やかな表情に変わっていた。 「まだ起きるの早いだろ?」 『隆二さんだって。……どうしたの?』 「いや、…今日の予定は?」 『え、えっと……』 即座に思い出せなくて困って見上げると、意地悪な笑みをたたえ楽しそうに私を見つめていて。 そんな顔ですら愛しいと思ってしまう。 『……もぉ、今じゃなくていいでしょ…』 一段階口元の笑みを広げた隆二さんは、一度視線を海原に移し、また私を捕らえた。 「……なぁ……Il Soleになりたい?」
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