一:わたしは巫女である

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 この、わしこそが村長だ! と言わんばかりの容姿と髭をしたこのご老人を騙くらかすのは、そう簡単にはいかなさそうだ。  うーん、ちょっと話を濁してみるか。 「さっきわたしは、自分は巫女だと語ったけれど、実はちょっとばかし他の巫女とは違うの。あんたは、歩き巫女って知ってる?」 「あぁ、存じておる」 「さっすが~、歳を取ると知識を多いのね」 「…………」  ……いや、そこで黙らないでよ。  せっかく、この美少女が調子良くおだててあげたと言うのに……何でそんなにご機嫌斜めなんだろう?  やっぱり、遊女のようにいかないって訳か。 「歩き巫女ってのを簡単に説明すると、特定の神社に所属せず、全国各地を渡り歩き、祈祷・託宣・勧進などの主に三つの活動を行って生計を立てている――ってのは表向きの話」 「は?」  村長さんではなく、その傍に立っていた男が呆けた声を上げた。  年の功か、村長さんは声を出さなかったけど、どうやら驚いているようだ。 「わたし達、歩き巫女はね、全国各地を遍歴し、神様の手が届かぬ地に救いをもたらす為に存在するのよ。要するに、妖怪退治の集団って訳ね」  行脚僧とは、まるで逆だ。
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