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あれが、自身の修練の為に旅をするのだとしたら、わたし達は妖怪を退治し誰かを救う為に旅をしている。
勿論、歩き巫女の全員が誰かを救う為に行動する訳じゃない。卑下したくはないけど、わたしなんてその典型だ。
だから、どちらが優れているのか、という論争は面倒くさいからしないように。
「……ならば、一つ利きたい――それは、どれくらい前のことじゃ?」
村長さんは、重々しい声音で訊いた。
……うーん、どうしようか。
先ほど、わたしは妖怪を逃したという話を、それはもう誇張して語った。一つの話を作れるくらいに、物語っぽく語った。
あらすじっぽく言うなら、巫女は数年前に逃した妖怪を、探し退治する為の旅に出たって感じだ。勿論、嘘だけども。
まぁ、そんな作り話を作ってしまったんだから、数日前やそこらじゃ効かない。そうなるなら――
「――三年前よ」
「なんと……!」
呻くように叫んだ村長さん。その傍に立つ男も、驚愕に表情を震わしている。声を発していないのかが、不思議なくらいだ。
わたしは嫌な予感を抱きつつも、しかし出した言葉は飲み込めない。
だから、続けて言う。
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