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贅沢はダメだ。人間の時みたいにな。
いつもオレが怖い時間が来た。
あ?オレだって怖い時はあるよ。今さら強がれねえし。
いや、これは誰だって怖いだろうな。
ザッザッという足音が、体全てで感じられる。
さらに地面にぼんやりとした陰まで現れた。
─人間が来たんだ。
午後になると、オレら獣を狩りに来る、狩人だ。
昨日も、何度かバーンという音が聞こえてきた。
チッ。
一旦、メシはお預けだ。
さすがに殺されるわけにはいかないからな。
身を低くする。カサッと音がして、オレの目の前は大樹だけになった。
ソローリ、ソロリと注意深く踏み出す。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ。さっきから胸のあたりがうるさい。うるさくて、さらにオレを震わせているみたいだ。
バーン、バーン、ズギューン!
あの人間達は、見つけた獲物は最後まで逃がさない。
これまで、どれだけ多くの獣が殺されたことか。
今なら、動物の気持ちが、細かく、鮮明に感じられるぜ。
ああっ、よそ事を考えるな、オレ!
生と死の狭間にいるんだ。
慎重に、慎重に……!
パキッ
あっ……!!!
しまった……。
ただ前だけに集中して、足元のことなんて考えてなかった。
小枝を踏んじまった……。
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