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森の中の男の子
くそっ。
なぜだ。
なぜこうなったんだ!
おい!
オレはさっきから助けを求めているはずなのに、聞こえるのは獣の遠吠えだけ。
アオーン、アオーンと何度も。
はあ、はあ。
とりあえず、今は誰も助けに来なさそうだ。
まあ、そりゃそうだろな。
逆にこれで助けが来たらそいつバカだよな。頭くるくるパーだよな。ある意味ホラーだよな。
だってさ。
オレはもう一度池に自分の姿を映してみる。
とんがったさんかく耳に、突き出た真っ黒な鼻。
目は少しつり上がっている。
目から鼻にかけて、するりとなめらかな感触だ。
毛皮は、全体的に灰褐色。
体中フサフサにおおわれているが、特に気にならない。
足には肉球もある。しかし、猫みたいに柔らかくはない。
そら。この通りだ。
オレ、オオカミになっちまったんだよ。
『赤ずきん』で、最後に赤ずきんを食うあのオオカミ。
『七匹の子やぎ』で、また子やぎたちを食うあのオオカミ。
よく色んなお話で、悪者になってる。あのオオカミ。
それに、オレはなっちまったんだ!
四つんばいで移動し、池から離れた。
正確に言えば、なった、じゃなくてならされた、だがな。
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