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あれは入学式の日のことだった。
どうせ誰にも気づかれないしと、校長先生が長々と話しているのをよそに、堂々と体育館を出ようとしたその時。
目があった。……気がしたのだ。
相手は同じ学年の生徒。とっても美人さんなロングヘアの女の子。
彼女は不思議そうに、見えるはずもない私を見ていた。……そういうふうに見えた。
私は驚いて、息を詰まらせた。息が詰まったので、代わりに目から涙が出てきた。
その時からあの綺麗な瞳は、私の頭から離れなくなってしまった。
私の心臓は記憶の中のあの瞳に見つめられるたび、鼓動を激しくするようになってしまった。
私はそれを恋というものだと仮定し、生きる糧にならないかと考えた。
考えた結果……挫折した。
初めは私の超能力が効かない相手なのだと、私を見つけてくれる人間なのだと期待してしまっていた。
けれどそれなら、あの日の私の奇行がもっと広まっているはずだ。
そうじゃなくても、私が視界に入る度に「あ、入学式の変な子だ。」とか思って見てくれるはずだ。
でも、そんなことは一切起こらなかった。
結局、あの日の彼女の、私を見つめる宝石のような瞳は、見間違いに過ぎなかったのだ。
それでもやっぱり私は彼女のことが好きだった。
だけど、彼女が私を見つけられないなら、この気持ちは永遠に承認されないまま。
私はそれが悲しかった。
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