ステルスさんが発見された日。

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 結局この恋とやらも、私を屋上に連れてくることしか出来なかったのだ。  まあ無駄なこと考えてないで、早く飛び降りないと……  バンジージャンプは怖気づいて飛ばないでいると、いつまで待っても飛べなくなるって言うからね。  ……て、もう手遅れかな。 「早まらないで!」  ダメだ。私を引き止める幻聴が聞こえてきた。 「あなたが何を悩んでいるのかわからない。でも、何も死ぬことはないじゃない!」  幻聴は続く。 「逆だよ。何にも、誰にも認められないのに、何も生きることはないって、そう思ったんだ。」  私は後ろを振り返らないまま、幻聴に対して言い返してみた。 「この世界に私は必要ないみたいだから、私にもこの世界は必要ないの。」  先のことなんてどうでもいい上に相手が幻聴だけあって、ちょっとキザな言い回しをしてみる。 「だったら……」  意外なことに幻聴はまだ言い返すようで、しかも私の右腕を掴んで来た。  ……ん? 腕を……掴まれた?? 幻聴に? 「私はあなたを必要とするから! だから! だからあなたも私を必要として!」  引っ張られた腕は私の姿勢を崩し、落ちようとしたのとは逆の方向に倒れようとした私の体は幻聴の胸に抱きかかえられる。  そして驚いて顔を上げた私の目に、幻聴……もとい、幻聴だと思っていたその人の姿が映される。 「寺嶋……さん?」  また寺嶋さんと目があった。  でも今度は、泣いているのは寺嶋さんの方だった。 「良かった……良かった……」
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