ローズハウス(中編)

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ローズハウス(中編)

 結局、三日もしないうちにわたしはロフトに移動することになった。  ミチルの歯ぎしりと大回転する寝相が凄まじい、それもあった。  だが一番の原因は、ミチルの厄介な性癖のせいだ。  しょっちゅうわたしの私物を勝手に使い、戻すのを忘れたとヘラヘラしている。  軽く注意しようものなら逆ギレし、ここからがさらにすごい。 「だってあたしできないんだよぅ、生まれつきバカだからしょうがないじゃん、ねえぇ、バカは死ねばいいって言うのぉ、ねえ、バカなあたしなんかこの世からいなくなればいいって思ってるんだあぁぁ?」  自分の言葉で勝手に傷つき、泣き喚きながらしつこく絡んでくる。  この歪んだ思考回路が理解できず、話し合いの場をもったこともあるが、不毛な堂々巡りに終わった。  わたしの方が忍の一字で文句を控えるしかなかった。  私物は全てトランクに入れて鍵をかけ、ベッドの下へ。  バスルームの備品も同じようにケースに入れ、しばらくは保管場所をそこにしていた。  問題は冷蔵庫の中の物だ。  ミチルが夜中に冷蔵庫の中を総ざらえして食べ尽くしトイレで吐くことを儀式のように繰り返していることが、初日で明らかになった。  トイレの分厚いドアでも防げない嘔吐の音と匂いは、わたしの眠気を完膚なきまでに吹き飛ばしてくれた。  付箋やマジックで名前を書くという共同生活の小技など、この女の子の皮を被った餓鬼の前には毛ほどの役にも立たない。  わたしは、食べ物はその都度近くのコンビニで買い揃えるに留めて防戦した。  ミチルの彼氏が置いていったデスクトップパソコンを借り、試行錯誤ののちスムーズに使いこなせるようになると、もっといろいろなことがわかってきた。
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