瞳美パート

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   ──女子高生の日常は、綱渡りの連続だ。  朝一番の檸檬(れもん)ジュースは、とにかくすっぱい。お肌のためと自分に言い聞かせ、涙がにじむのをがまんした。  機種変したばかりのスマホに残った複数の通知に、下唇を噛みしめる。  視界のまんなかには、私が眠っている間にくり広げられたセカイ。  私が参加している歌姫・和泉朱里(いずみ しゅり)ちゃんのファンコミュニティでは、この1年ほど雑談のネット配信が中心になっていた。  だけど、我がコミュニティでは、未成年の深夜配信の参加は禁止なのだ。 「また、遅くまで楽しそうにして……」  つぶやきながら、小さくむせた。檸檬の苦みを、私はまだ上手に飲み干せない。  見つめるのはハンドルネーム“ストック”さんへのみんなのコメント。  本名は知ってる。榊原春斗(さかきばら はると)さん。都内に住む24歳、社会人。  私はちゃんと名前で呼びたいのに、ストックさんはダメって言う。うっかりみんなの前で呼び間違えたら危ないでしょ、って。 『俺は使い分けるの得意だけど、瞳美(ひとみ)は慣れてないからね』  ──そう、ストックさんは私の彼氏だ。 .
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