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「……ちょっと。俺の許可なくやめてよ、姉さん」
オダさんは、リアルに俺の姉だ。
あえて他人ぶっているわけではない。ただこの姉は、19歳くらいでさっさと嫁に行ってしまった。それから10年くらいになるのだ。
和泉朱里のファンクラブ会員としてネットで活動を始めた頃、姉さんと俺はすでに苗字が違っていて、ライブで会う仲間にはあえて言う機会がなかったのだ。
俺と姉さんは、ただ仲の良い他人。そう思われているから、そのままにしている。
『ねーえ、早く瞳美ちゃんのこと、妹にちょうだいよ。あたし、あんたみたいな策略家の弟より、妹が欲しかったんだから』
「誰が策略家だ。それに、姉さんのために付き合ってるんじゃないよ。瞳美はまず、俺の」
『瞳美ちゃんにはもう、言ってるの? 結婚考えてるって』
「……言うわけないだろ」
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