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やがて彼女はギターを肩から掛け、演奏を始めました。
その左右に、ドラムを叩く男性と、キーボードを弾く女性。
中央で天を見上げて歌い切る少女の声は高く、力強く、鈴の音のように澄んでいました。
曲の最後で少女がカメラ目線になった時、
「あっ」と声を上げました。
私、この子を知ってる。
番組の司会者が
「輝夜(かぐや)の皆さんで『新月の祈り』でした。ありがとうございましたー」
と言ってCMに切り替わった瞬間、
中学一年生の通学路の思い出がよみがえりました。
すぐにスマホで調べてみると、
あなたは『カグヤ。『輝夜』のヴォーカリスト。年齢非公開。
月で王族の姫として育つが、身分違いの恋に落ちた罪で地上に堕とされる。
今でも恋の相手を想っており、少しでも想いが届くよう歌い続けている』
と解説されていました。
二十八歳になっているはずのあなたは、
あの頃より少し大人びただけの十代の少女に見えました。
時の流れ方が、私とは明らかに違うようなのです。
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