8人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
最初は興味本位でした。
知り合いが歌手になっている、と友人に言いふらし、優越感に浸っていました。
インターネットであなたが褒められていたら、
まるで自分も褒められているような感覚がしました。
もっと賞賛が欲しくなり、画像や動画、雑誌の切り抜きやインタビューを集めました。
知り合いを応援するんだ、という気持ちでファンクラブに入会し、
ライブを観に行きました。
舞台上のあなたは小さく、顔がしっかり見えませんでした。
ただ、マイクを通して聴こえる声は確かにあなたのものでした。
十五年前に同じ制服で肩を並べて歩いた人が、本当にそこにいるのか半信半疑のまま、
観客の熱にのまれてあなたを応援しました。
ライブが終わると会場はアンコールを求めて湧きました。
あなたは追加で『月の下に埋める』を歌いました。
輝夜の音楽を竹林に埋め、満月の夜に想い人に届けるという曲です。
埋めた場所が月の光に晒されると、
月と地上を結ぶ道が現れるという幻想的な世界観。
曲が終わると舞台は暗転し、観客たちが会場から外へ散っていきました。
最初のコメントを投稿しよう!