十五年を経て

5/22
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
最初は興味本位でした。 知り合いが歌手になっている、と友人に言いふらし、優越感に浸っていました。 インターネットであなたが褒められていたら、 まるで自分も褒められているような感覚がしました。 もっと賞賛が欲しくなり、画像や動画、雑誌の切り抜きやインタビューを集めました。 知り合いを応援するんだ、という気持ちでファンクラブに入会し、 ライブを観に行きました。 舞台上のあなたは小さく、顔がしっかり見えませんでした。 ただ、マイクを通して聴こえる声は確かにあなたのものでした。 十五年前に同じ制服で肩を並べて歩いた人が、本当にそこにいるのか半信半疑のまま、 観客の熱にのまれてあなたを応援しました。 ライブが終わると会場はアンコールを求めて湧きました。 あなたは追加で『月の下に埋める』を歌いました。 輝夜の音楽を竹林に埋め、満月の夜に想い人に届けるという曲です。 埋めた場所が月の光に晒されると、 月と地上を結ぶ道が現れるという幻想的な世界観。 曲が終わると舞台は暗転し、観客たちが会場から外へ散っていきました。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!