十五年を経て

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マロちゃん、 とあなたは表情筋を動かし笑顔を見せてくれました。 おかげで、大嫌いな名前が宝物になりました。 脳内でスローモーションをかけて、何度も反芻しました。 マ・ロ・ちゃ・ん。 その貴重な声帯を震わせ、舌と唇を使って、もっと私を呼んで欲しい。 カグヤという一人の人間を丸裸にし、肌を重ねたい。 暇さえあれば逢瀬の空想に浸りました。 写真のあなたの唇に何度くちづけたことか! 女同士だけど、性別なんて関係ないですよね? 雑誌のインタビュアーやテレビ番組の共演者がうらやましく、 バンド仲間と談笑していると嫉妬すら覚えました。 パンダのぬいぐるみを抱きしめている写真を見ては、 そのパンダになりたいと焦がれたものです。 こんなに熱烈に誰かを好きになったのは初めてです。 三十歳手前になってこんな感情が芽生えるなんて思ってもみませんでした。
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