十五年を経て

13/22
前へ
/36ページ
次へ
その噂が出回った頃、週刊誌であなたの妊娠が報じられました。 マイクを向けられたあなたは否定しませんでした。 誰の子か? わかるはずもありません。 だって私は、あなたの友達でも恋人でも親でもない、 ただのファンですから。 痛感しましたよ。 私は、あなたに一歩距離をおかれてしまう狂信者だと。 そうでしょう? どうして妊娠なんてするの? あなたは月の姫でしょう、想い人がいるんでしょう? などと、私がいくら悲しがってもあなたは振り向きもしない。 むしろ、そんなふうに責める私が狂っている、 と世間からは嘲笑されるのでしょうね。 この恋、終わりにしようと決心しました。 叶わないと悟ったからです。 最初からわかっていたはずなのに、何を期待していたのでしょう。 もうあなたをメディアで見られない。 このまま好きでいても耐えられない。 もちろん調べようと思えば、居場所は突き止められるでしょうけど…… いつまでも未練を引きずってしまいそうで。 「月に還った」それを信じよう。 恋を終わらせるために、とことん月設定に付き合ってやろう。 そう言い聞かせて、『竹取物語』を読み返してみました。 恥ずかしながら、おおまかなストーリーしか知らなかったのです。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加