十五年を経て

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病室の窓から月を眺め、白い光の面にあなたを探しました。 そうすると優しい気持ちになれました。 あなたはきっと、人知を超えた方法で、月にいる想い人との子を身籠ったんですね? だから月に還ったんですね? それなら、私は恨みません。 あなたへの恋を思い出にして、大切に胸にしまっておきます。 どうか、どうかお幸せに。 そう願いました。 一方で、妊娠報道をされてしまった「神楽耶なよ」への未練は断ち切れませんでした。 入籍したのだろうか。 相手の男はどんな人だろう。 私は車椅子生活を余儀なくされているのに、 あなたはファンをほったらかして、世間一般のありふれた幸せを選ぶのね。 私もあのまま婚活を続けていれば良かった。 たった一人破談になったからといって、また別の人がいたかもしれない。 よりによって、あなたを愛さなくたって……。 毎晩のように枕を濡らしました。
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