十五年を経て

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三月の終わりだというのに、季節外れの大雪が降るような寒さが続いていました。 ようやく暖かくなり、気温差のためか桜が開花したと報じられた日でした。 私は通院のために松葉杖をついて電車に乗りました。 いつもは優先座席が空いているのですが、 その日、担当医の都合でいつもと違う時間帯からの診察だったため、 車内は少し混んでいました。 座席は空いていません。 私は立ったまま電車に揺られ、 カーブで体がぐらついた拍子に一人の男性にぶつかってしまいました。 運悪く男性は酔っており、 髪の薄くなった額を真っ赤にして 「何してんじゃ、今ので骨折れたわ!」 と怒鳴り声を上げました。 「治療費払えよ」 などと絡んでくる男性に、人々の視線が集まっていましたが、 誰も止めてくれません。
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