望んだものはただ、ひとつ ~サチュアの罠~

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 朝食を食べ終えてすぐに、シェリダンはアルフレッドが事前に用意していてくれた衣服に着替えた。紛れ込みやすいようにと旅人を装った少しくたびれている麻の服、髪を隠す布を巻いて、その上からマントをすっぽりと被ればシェリダンの顔は見えづらくなる。アルフレッドも同じように旅人に身をやつし、目立つ金の髪を布で隠し、少しだけ色の入っている眼鏡をかけた。 「陛下、妃殿下、本当に行かれるのですか? できれば、今からでもお止まりいただきたいのですが」  エレーヌは不安げに表情を曇らせたままだ。それもそうだろう。いくら護衛が守るとはいえ、城の中にいるよりも断然危険が伴う。もしもオルシアの王夫婦だとバレてしまったらと思うと気が気ではない。それは護衛をする近衛達も同じ思いなのか、先程から苦い表情のままだ。 「心配するなエレーヌ。すぐに帰ってくる」  そう言って、まだ引き留めようとするエレーヌ達をよそにアルフレッドはシェリダンの腰を抱いて裏口へと向かった。  一歩城の外へ出れば、そこはもう人の波で埋め尽くされ、うるさい程の賑わいを見せていた。アルフレッドはシェリダンの腰から手を放し、かわりに手を握る。 「はぐれるなよ」  ゆっくりと歩くアルフレッドに、シェリダンはギュッと手を握り返した。アルフレッドの表情が満足げになる。 「すごい賑わいですね」  わかってはいたものの、やはりボン・ナキュイユは最大の賑わいを見せている。比較的人の少ない時間であるのに、これほどに人が多いのだ。夕方などはどれほどのものになるのだろうかとシェリダンは思わずアルフレッドに身を寄せた。  ゆっくりとはぐれないよう、人の波にさらわれないように身を寄せ合って歩く。チラチラとテントの中を見渡した。ガラス細工の小さな置物に、珍しい花、伝統織物であろう絨毯やカーテンを売っているテントもあった。食欲をそそる伝統の食事に甘い香りを漂わせる菓子。どれもこれもが新鮮で、シェリダンは子供のようにはしゃいでしまうのを抑えるのに必死だった。
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