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「なんでここに居るの?死にたいの?」
そう訊いても彼女は怯えた表情ひとつ浮かべなかった。
「何度も死のうとしたけど死ねなかったから、それはそれで嬉しいかも。これからもまだまだ痛みは続きそうだし、時々ホント…地球ごと無くなっちゃえって思う」
カホはナイフを健太郎の喉元に突きつけると、女性を睨みつけた。…彼女の考えが分からなくて、頭が混乱する。
「なんでそんな奴らのためにあんたが身体張って時間費やして復讐なんてしてんの?時間もったいなくない?放っておいたってそういうやつらは自爆すんのに。
大企業の社長かなんか知らんけど、経営がうまくいかなきゃ社会から袋叩きにされるでしょうよ。このご時世、大企業だってどんどん潰れてくし。
そもそもそいつ、経営できんの?頭悪そうだけど。SNSでアホな更新して経営不振より先に社長の座から退くのが落ちじゃない?」
小さい割に考えることは大人なんだな…と、カホは思った。
彼女の言う通り、初めから復讐なんて考えていたわけではない。美園が婚活パーティでコイツと再会しなければ、辛い過去を思い出すことも、人を殺す事もなかった。
あの日、泣きながら美園がカホを頼ってこなければ、和泉や加奈子とも二度と会うはずがなかったのだ。
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