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怒りで肩を震わせている美園を見て、カホは覚悟するように和泉の身体を健太郎たちの方に投げ出した。
裸の上、血まみれになった和泉の身体を健太郎は拒否して突き飛ばしたが、それを見て和泉の両親は健太郎を睨みながら和泉の身体を抱きしめる。
「お婿さんの本性見た?今まで気づかなかったなんてバカだよね。どうせあんたたちも金に目がくらんだんでしょう?」
ナイフを再び彼らに向けると、彼らは壁際に身を寄せ、身体を縮める。
ここまでやったんだから、これ以上何をしたって死刑は確定だ。健太郎や和泉のような最低な人間を殺すためにいろいろ工作もしたが、二人を生み育てた人間は最も罰せられるべきではないだろうか。
その時のカホはそんな事まで考えていた。
ふと、背後から物音がして視線をそちらに向けると、会った事のない小さい生き物がこちらに向かってひょこひょこと足を引きずりながら歩いてくる。
飛びかかって来る体力はなさそうだし、身体も顔も幼いからか、こちらに向かってきても害はなさそうに見えた。
しかし、放っても置けない。
「誰?」
そう訊くと、その生き物は近くにあった椅子を引き寄せ、そこに座った。
「ああ…もうほんと、この身体どうにかならんかね」
彼女はまだ若そうに見えるのに、70代のおばあさんのように身体を折り曲げ、ため息を吐く。
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