死を願う少女

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死を願う少女

それから1週間後、神藤は札幌市内の内科に来ていた。 小さな病院だが、患者は多い。 待合室は意外と広く、3人掛けの椅子が6台並んでいる。 待ち合い室の受付の前に並んだ椅子に腰かけた神藤は、手帳を開きながら、待ち合わせの時間を確認していた。 例の少女とこの病院で待ち合わせをした。 少女の名前は槇原(まきはら) 彩羽(いろは)、30歳。 少女と呼ぶには無理がある年齢だが、見た目で言えば少女だ。 穢れのない無垢な瞳、透明感のある肌。 しかし、あの日は痛みのせいか、髪はボサボサでメイクのひとつもしていなかった。 札幌に来るのだから、今日は軽くでも化粧をしてくるのだろう…と、思ってはいるが。 「神藤先生」 ふと、頭上から声を掛けられて神藤は顔を上げた。
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