死を願う少女

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受付でバインダーを受け取ってきた女性は、彩羽(いろは)の前で立ち止まり、それを手渡した。 「これ、書いて」 彩羽はゆっくりと身体を起こしながらそれを受け取り、ボールペンでチェックを入れていく。 その間に女性は神藤を見、頭を下げた。 「神藤先生ですよね?本当にいろいろありがとうございます。彩羽の姉の葉月(はづき)です」 ジーンズに白いシャツ、その上からカーディガンを羽織っただけの女性を見て、神藤は一瞬、ドラマのワンシーンか?…と、錯覚した。 まるでモデルか女優を相手にしているようだ。 「ああ…お姉さんだったのか。どうぞ、ここにお掛けください」 神藤は慌ててそう言い、真ん中の席を空けてそこに座るよう勧めた。 葉月は頭を下げ、彩羽の様子を気に掛けながら椅子に腰かけた。 「これからレントゲンとか尿検査とか、あと…血液検査とかもあると思うけど、我慢できそうかな?」 神藤が彩羽の顔を覗き込むと、その様子を見ていた葉月は苦笑いを浮かべた。
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