死を願う少女

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キレるとすぐに怒鳴り散らし、自分が建てた一軒家の壁に自ら穴を開けて行ったという、悪い意味で破天荒な父親。 子どもにはひどい暴力は振るわないまでも、妻の腹を蹴って、肋骨を骨折させたこともあったという。 葉月が社会人になり、自分で稼ぐことができるようになった頃、父親抜きの家族会議を開いて両親を離婚させたのだと言った。 「それからも彩羽は精神科に通っていろいろ検査してもらってたけど、結局痛みの原因は不明で、他の病院で診てもらっても同じ事を言われた上、“若いのに可哀想に”って医師から言われたそうです。 まあ…正直私は健康体なんで、あの子が言う“痛い”っていうのがどの程度か分からないんですけどね」 「それにしたって…不思議な症状だね。痛いって言っていても、次の瞬間には動き回ってるわけだし」 神藤もあまりそう言った症状を聞いたことが無かった。 やはり心身症なのかな…と、思いながら時計を見、まだしばらく検査に時間が掛る事を考慮して、その時間をどう潰すか思考を巡らせる。 別に神藤がこの診察に付き添う必要はない。 お膳立ては全て終えたし、後は検査結果が出て、病名がはっきりすれば神藤は必要ないのだから。
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