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そのまま自動ドアを抜けて外へと出た神藤は、画面を見ながら顔をしかめた。
着信が来ている。
『五十嵐くん』の文字を見ながら、その番号に折り返し電話を掛けた。
しばらく避けていた名前だった。
電話は数コールで繋がった。
「あ、もしもし。五十嵐くんか?」
『先生、すみません、お忙しい時に』
受話器の向こうで懐かしい声が聞こえる。
とはいえ、数ヶ月前に聞いた声だ。何年と経ったわけじゃない。
『神藤先生、今どこですか?ちょっと相談したいことがあったんですけど、今から会えませんか?』
どこか焦っているような声を聞きながら、神藤は背後を振り返った。
院内では葉月が外にいる神藤を見ている。
「すまないが、今ちょっと外出中なんだ。いったいどういう話かな?電話じゃ無理かい?」
『見てもらわないと説明が難しいんですけど……』
緊急事態のようだから、神藤は仕方なく病院名を告げた。
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