死を願う少女

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なぜ、そこまでの痛みを感じているのに、病名がつかないのか不思議だと葉月は語った。 検査結果には病気だと診断できる材料が全くと言っていいほどなかったのだ。 どちらかと言うと、健康体と言える身体だった。 血液検査の結果も、尿検査の結果も、特別気になる点はなかったという。 しかし、それも10年程前の検査結果だ。ここ数年は彩葉の方が諦めてしまっていて、検査を受けることもしなかったらしい。 どうせ「原因不明」と言われるのなら、きっと自分がおかしいのだと自分自身に言い聞かせていたのだ。 「そんな身体だから、仕事も安定しなくて……。転職したかと思ったら、また体調崩して長期休暇。そのうち上司から厭味を言われるようになって、辞めざるを得ない状況まで追い込まれて。 でも、あの子…会社では誰より一生懸命働いて、いずれは社員にって言われるようなったこともあったんですよ」 そんな話をしていると、よろよろと彩羽がこちらに向かって歩いてきた。 どうやら一通りの検査を終えたらしい。 ソファにドカッと座ったかと思ったら、また彩羽は背中を丸めてうずくまった。 「痛いの?」 葉月が訊くと、彩羽がうめき声を上げる。 「背中…痛い」 「背中?昨日は頭じゃなかった?」 彩羽にそう返しながら葉月は彩羽の背中を撫でたが、彩羽はそれを嫌がった。
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