死を願う少女

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「痛いから触らないで……」 「あ、そ」と、葉月はすぐに彩羽から手を放すと、神藤を見て苦笑いを浮かべる。 その時、神藤の携帯が身を揺らして、神藤はビクッと身を竦めた。 「すまないね…ちょっと……」 上着の内ポケットから携帯を取り出しながら外に出ようとして、自動ドアから入って来ようとした人物と目が合った。 「五十嵐くん…来たのか」 神藤がつぶやくと、五十嵐は神藤の隣に座っていた彩羽と葉月を見た。 「ええ。ちょっと急いでたので。ああ…少しだけいいですか?」 そう言われたら、神藤は仕方なく外へと向かった。 院内でする話ではないと理解しているからだ。 五十嵐は警察の人間だ。 精神科医だった神藤は捜査の手伝いをしたこともあって、五十嵐とは何度も会っているし、一緒に悲しみや苦しみを乗り越えてきた。 数ヶ月前に起きた殺人事件では、二人とも生きる気力をなくすほど傷つき、支え合うようにしてここまで立ち直った。
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