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「なるほどね。いや、ありがとう。助かったよ」
神藤はそう言って笑っているが、葉月は不安になったようだ。
特別何かできたわけでもない。
事件の被害者という人が死んでしまったのか、もしくはまだ生きているのか、それすらも知らされていない。
身元だって分かっているのかも知らずに、ただ勘だけで答えた内容に不安が無いわけがなかった。
「あの…じゃあ、戻りますね」
葉月がそう言って戸惑いながら院内に戻っていくと、五十嵐は訝し気に神藤を見た。
「どうして彼女に訊いたんですか?」
「身元が分かれば早く事件解決できるじゃないか」
思いがけない言葉に五十嵐は目を丸めながら、「え…いや」と、慌てふためく。
「身元は分かってますよ」
神藤も驚いて五十嵐を見、目を丸くしている。
「だって…じゃあ、なぜ君は私を訪ねてきたんだい?」
「それは…この殺人の動機を知りたくて……」
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