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そこにやってきたのはジョギング中の中年太りの男性だった。
妻というには随分歳の離れた若い女性と一緒に走っている。
息切れし、女性から数メートル遅れを取ったその人は、桜の木を見上げる男性の元へ来て足を止めた。
「神藤先生……?」
その声に、神藤と呼ばれた男性が振り返る。
「やっぱり神藤先生じゃないですか。こんなところで何やってるんですか?」
河川敷のジョギングコースで何をやっているのかと訊かれても、散歩をしているとしか答えようが無かったが、神藤と呼ばれた男性は曖昧に微笑む。
「キミは娘さんとジョギング中かい?健康的でいいね」
前方を走っていた女性がこちらを振り返り、その場で足踏みしている様子を見て、二人は顔を見合わせた。
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