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一週間の半分は札幌にあるマンションに泊まり込まなくては仕事にならないような日々だった。
ふと、葉月はスマホを操作してある人物の番号に電話を掛けた。
コール音の後、早々に『ハイ。どうだった?』と、受話器の向こうから女性の声が聞こえた。
「ああ、やっぱ病気だったみたい。病名…はっきり覚えてないんだけど」
『は?ちゃんと聞いてきなさいよ。で?治るの?』
「いや…治んないみたい。なんか…自己免疫疾患って言ってたけど」
『マジで?彩羽かわいそうに。んで?これからどうなるの?通院とか』
「まだどんな病気かもちゃんと調べてないから何とも言えないんだけどさ…ちょっと相談があって」
葉月がそう言うと、受話器の向こうの声が少し小さくなる。
『何よ?仕事辞めるとか言わないわよね?』
「言えるわけないでしょ。これからお金かかるのに」
『そうよね。なら何よ?お金の事?』
軽い調子の声が受話器の向こう側から返ってきたことに少しだけホッとした。
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