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過去
「分かりました。じゃあ…それ、80、200、120…それで行きましょう。ええ…分かりました。じゃあ、また来週。はい…失礼します」
部屋で電話を掛けていた葉月は携帯を切ると盛大にため息をついた。
仕事はどこででもできるが、今は考えることが多すぎた。
子どもの頃から身体の弱かった彩羽は、社会人になっても相変わらずだった。
弟の奏多は健康的であり社交的でもあるが、彩羽はその真逆をいく。
そんな妹を心配して、高校を出た直後、葉月は二つの仕事を掛け持ちした。
一般事務の仕事と夜は居酒屋で皿洗いをした。
高校時代の友人がこの仕事を持ちかけてこなければ、ずっとそんな生活をしていたかもしれない。
ネット販売の仕事を始めた当初は顧客も得られず、売り上げも低迷していたが、数年前から顧客数がぐんと増えた。
大手インターネット通販会社に出店を決めたからだ。
そこから顧客が徐々に集まり始め、会員数も増えて手が回らなくなり、人を雇うまでに成長した。
最近では取引先も増えて、商談の電話が毎日のように掛かってくる。
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