5.十二の春――不吉な予感

3/6
1400人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
 *  正午から開始した僕の誕生日パーティーはつつがなく進行していった。  いつもなら窮屈で退屈なパーティーも、今日はガーデンパーティーなので少し気が楽だ。  それに、最初こそ貴族たちが父上や母上、そして僕に自分の息子や娘たちを連れ挨拶周りに来ていたが、二時間ほど経ってようやく終わりを見せている。そろそろ僕も小腹が空いてきた。何か食べたいな。  庭園を見渡せば、中央を広く空けて左右にずらりと長机が並び、そこには所狭しと料理が並べられていた。肉や魚料理はもちろん、普段はあまり手に入らない南国の色とりどりの果物なんかも用意されている。もちろん今回は子供がメインのパーティーなので、お菓子やケーキやチョコレートは外せない。  ――あぁ、お腹空いた。  そろそろ席を立ってもいいかな。僕は隣に座る父上の方に視線を向ける。  けれど父上はどこぞの貴族と話をしていて、僕の視線に気付かなかった。そのさらに向こうに座る母上なんて、尚更だ。  そもそも母上とはあれ以来――今では普通に話すようにはなったけれど――まだ何となく気まずくて、言いたいことを言い合える仲ではない。  加えて、ヴァイオレットは養父であるパークス男爵に遠慮して参加を辞退していた。だから僕は、ただひたすらに暇なのだ。  僕は再度父上の方を見る。けれどやはり父上はこちらに気付かない。  まぁ、すぐに戻ってくればいいか。僕は席を立とうとする。けれど――。 「――ッ!?」  椅子から立ち上がろうとした瞬間、どういうわけか、身体がぐらりと傾いた。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!